書架沈没船36525

100年あれば物語が36525ぐらい意識下に溜まるような気がする。その書架の引き出し。

THE DAYS 1. 福島第一原発は水没しました 【感想】

<THE DAYS>

第1話「福島第一原発は水没しました」の感想です。

 

・総評

静かで各個が大袈裟なキャラクタライズをされておらず、大きな災害とそれに関わる重要な証言をする証人がクローズアップされがちな中、周りの人間の連なった営みを感じられる。

そしてそれだけに、あっけなく流される人命、手探りの恐怖がそこにある。

監督の一人が「リング」の監督だと知り、なるほど随所に見られるホラー的な手法はそのためかと納得した。そしてそれは、大災害の恐ろしさを感覚的に訴えかけるのにとても効果的であった。

 

「事実に基づく物語」

「安易な美談や英雄譚を避けた」

 

”あれ”について、英雄的な物語に描かれたものには微妙な焦げ臭さに似た嫌な感じを受けてしまう(それゆえ私はいろいろなものを避けて来た)。しかしこの物語の、ヒロイズムというものが存在しないリアルへの近い感覚のおかげで、続きも視聴できるだろう。

 

 

脚本を確認したくてエンドロールが流れるのをジリジリしながら待ったが、原案の文字を見た時は正直、「大丈夫かぁ〜〜?」と思った。だが、おそらく(あくまで)”原案”なのだろう。「英雄譚を避け」という言葉を信じようと思う。

 

 

 

-----------------以下内容言及----------------------------

 

冒頭で例の「明るい未来のエネルギー」の看板に胸を打たれる。

過去形で語れない物語である事が明言されていてる姿勢を好ましく思う(と言うのは変かもしれないが)。

当事者でもなく、何をかもしていない自分がどうこれを受け止めたら良いのかという惑はあるが、とにかくあるものを見てみること事態は何ものでもないだろうと言い聞かせて進もうと思う。

 

説明が抑制的で、専門用語も「現場ならそう言うもの」という以上のものはない。

だがまあそれで良い。ちょっとした(花見の予定とか)何気ない会話が、年配上司の会話そのもののようで面白い。東央電力副社長の、理不尽な怒り方もいそうな上司の感じで面白い。

地震発生後はざわざわするのだけど、意外と人は落ち着いている。確かにそういうものだ。

総理と、おそらく予算委員会で横にいるのは官房長官だとおもうが、ほんのり似ている様に感じるのが面白かった。

 

 

1話中盤に差し掛かり、誰もいない敷地に防災放送(?)だけが流れているのはとてもホラーだと思いながら見た。

人気があるはずなのに誰もいない村、海鳥の泣く声……

うん。ホラーですね。

振り返って津波が来ることに気づく三人の反応が、淡々としつつリアルを感じる。

人間って初めは意外とこういう抑えた反応なのですよね。

 

運用補助共用施設に入る二人。

非常用電源になっているせいか、タイミング的にそれも切れた時なのか、この途中の空間に閉じ込められた所に波が押し寄せるシーンなど、「ホラーーーーーーーーー‼︎」って心の中で叫んでしまいました。強化ガラスのやっかいさと波への無力さが相まって押し寄せる。

(物語的には恐怖の見せ場だけれど、そうして亡くなった人もいるのかもしれないと思うとなんとも心の持って行き場が見出せないですが)

 

技術の粋を集めた場所で、電源喪失となり全く状況が掴めないことになるのは、ほんとうに為す術がない。

モニターが次々と切れていき無反応になった制御室で、絶望を表す様に電源がバチン切れる。0を指したまま動かない計器は無情だ。

普通の場所なら現場を確かめに行くのだが、それが運転中(だった)炉となると……。

 

 

波が建屋を浸し、日が沈む景色でエンドクレジット。

 

恐ろしさ、を思い出すべきかもしれない。

中盤からホラーの手法で畳み掛けられた第1話でした。

 

 

紙のマニュアルって非常時に役に立つよな……。

 

 

 

※「Fukushima50」は英雄譚を語ることで落とす何かがありそうで見ていません。